【インタビュー】マニラでの睡眠薬強盗被害【犯罪被害】

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先日雨季の只中にバギオにいらっしゃったN.N.さん。宿泊予定初日にゲストハウスで行われていた文化交流イベントに、マニラからやって来て参加する予定でした。
しかしN.N.さんは到着予定時間を過ぎてもなかなか現れず、スタッフはイベントの様子を伺いながらも一方でご到着されないことに気を揉んでいました。結局イベントが終わり、諦めかけた深夜過ぎにようやくご到着。遅れて到着した理由はマニラで財布を盗まれたためと言うことでした。その後なぜか無性に眠く道中すべて寝て過ごしたため遅れる連絡もできなかったとのこと。しかし経緯を聞いてみると単なるスリなどではなく、マニラで被害が多く出ている睡眠薬強盗に遭ったようでした。

睡眠薬強盗とは?

昏睡強盗罪(こんすいごうとうざい)。刑法239条で定められた罪。人の意識作用に障害を生じさせ、反抗できない状態に陥れて財物を投手することを内容とする。
(ウィキペディアより引用)*日本の刑法です。続きはこちら(外部リンク)

別名、昏睡強盗。主に海外旅行において遭遇する危険がある犯罪手口で、やや懇意になった相手に睡眠薬を飲まされ、眠っている(意識を失っている)あいだに金品を奪われるという手口のこと。(以下略)
(Weblio辞書より引用)続きはこちら(外部リンク)

以下、N.N.さんから思い出せる限りお話していただいたものです。これが警察によって睡眠薬強盗と断定されたわけではなく、元々(聞いた側の)備忘録だったため読みにくい点があると思いますがご了承ください。

N.N.さん

  • 男性、21才、大学生、英語は流暢で日常会話には事欠かない。
  • フィリピンに来た目的
    • ▼バックパックの旅を楽しむ。
    • ▼海外旅行、一人旅は慣れている。アジア方面も多く行く。
  • フィリピンでの旅程予定
    • ▼マニラに2日滞在後バギオへ移動。フィリピンで3番目に高いプラグ山への登山を計画。

 

遭遇した事件について

―どうやって犯人(と思われる人物)に出会いましたか?

フィリピンに到着して2日目にマニラ市内を散策していました。途中エルミタ地区にある公園のベンチに座ってアイスクリーム食べている時に50代くらいの男性に話しかけられました。彼が隣に座ってきて、最初はタガログ語で声かけられたので、つい、「は?」と答えたら、「ごめん、ごめん! 君がフィリピン人だと思ったから声かけたんだ!」と英語で弁明をしてきました。すごく明るく大きな声でした。彼が去る様子もなかったので、僕もそれなりに返事をして会話を続けました。

―声をかけられて、どういう気持ちでしたか。

一人だし、話し相手がいた方が楽しいかもと思いました。彼は自分もセブから来た観光客だと言っていました。だから観光客同士一緒に街を散策しようと誘ってきたんです。暫くしたら彼の奥さんだと言う女性(同じく50代くらい)が近づいてきました。それまで女性は近くの屋台で売っているアイスクリームを買いに行っていたようです。

―特に怪しいとは?

思いました。僕が見るからに警戒していると相手にもわかったと思います。ただ僕も警戒を解かなければ少し付き合うくらいは大丈夫だと。明るいしよく喋るので気まずくはならないので、会話を続けていました。ポケモンGOの話をやたら振ってきましたね。僕がプレイしていたからですが、タガログ語だとなんか下ネタ的な意味合いにもなるらしくて、ずいぶん楽しそうでした。

―その後も公園にいたんですか?

夕方だったし、そのあと夫婦に誘われてエルミタ地区の公園から文化センターの西方の海側へ徒歩で移動しレストランに行きました。レストランは海のそばのすごく雰囲気の良いところでした。テラス席に通されて海が目の前に見えたし、そんな景色の中で気分も良くなりました。
今考えればレストランまでがスムースすぎました。事前に下調べしていたんでしょうね。店を決める時も入る時もなんだか全部最初から決まっていた感じ。でもところどころで引っかかっても、「そんなものか」と自分自身を納得させました。
2時間くらいそこにいたんですが、最初は普通の雰囲気でスタートしたと思います。

―どんなものを飲食しましたか?

僕はRED HORSE(アルコール度数強めのビール)を5本ほど、食べ物は普通のフィリピンのご飯らしきものをみんなで分けながら食べました。美味しかったですよ。タバコはみんな吸っていました。僕はその間楽しみながらも、カバンを抱え込んでスマホも手放さず、気を抜かないようにしていました。

ーそこで財布を盗られたんでしょうか?

いえ、そこではないです。このあとです。ここでは普通に飲み食いしていたんですが…、レストランを出たあとに突然意識がなくなりました。

tavern-1362960_640-1 man-69287_640 *写真はイメージです。

―ご到着時の様子から見て睡眠薬を飲んだ可能性が高そうですね。

たぶん…でもどれに入っていたんだろう、みんなも同じものを食べていたし。それにビールは僕だけビンから直接飲んでいたんですよね。

―レストランの従業員がグルだった可能性は?

わかりませんが、もしすぐに警察が来た場合つかまってしまう可能性も高いだろうし、店員にそういう素振りは見受けられなかったと思います。

―では、他に協力者らしき人物はいなかったんですね?

いや、実は食べている間にカズン(いとこ・親類)だという女性が現れたんですよ。紹介されたあと、席に座って一緒に飲み始めました。自己紹介で職業は「キンダーガーデン・ティーチャー」、夫婦と同じくセブから観光にやってきたと聞かされました。年齢は24歳と言っていましたが、実際はもう少し年上かなと。30は過ぎているように見えました。
またこれも今考えればなんですが、彼女は前触れなくいきなり現れたと思います。それまでに夫婦が彼女に連絡しているような素振りはなかったのに、ふっと現れたんです。どこかで潜んで待っていたのかも。

―カズンが現れるまで、他の人に怪しい動きは見られませんでしたか?

男性がやたらトイレへ行っていました。その時に携帯でカズンに連絡しているとも考えられるんですが、たぶんカズンが現れてからも頻繁にトイレに立っていました。一度、僕もトイレに行きたくなったので一緒のタイミングで行こうとしたら、すごく嫌そうにされました。結局連れ立って行ったんですけど。

―繰り返しになりますが、睡眠薬を入れられたタイミングに心当たりは?

食べ物でなければ飲み物ですけど…。…あの、マニラの文化というかフィリピンの習慣ですか? 氷を入れたグラスでビールを飲む、僕はあれが慣れなかったのでずっとビール瓶から直接飲んでいたんですが、一度お母さん役の女性が氷入りのグラスを勧めてきたんです。無下に断るのも悪いかなと思って少し飲みました。たぶんこの時だと思います。

―そのビールを飲んだのは、レストランに入ってから何分くらい経った後でしたか?

席に着いてから大体45分後くらいです。

―量は?

グラスで1杯半くらい。あまり覚えていないんですが、そのあとにジュースも注がれて飲んだような気もします。

―飲んだ後すぐに体に異変は感じませんでしたか?

すぐにはありませんでしたが、少し経ってから一瞬だけクラっと頭が回るような感じがしました。アルコールには強い方なので、その時はビール数本で酔うなんてどうしたのかと思いましたが、きっと異国の地に着て間もないし疲れているからだと思い直しました。

―眩暈のような感覚ですか?

なんか…そうですね。クラクラとする感じです。痛みを感じたわけではないです。

―その後も眩暈が続きましたか?

大丈夫でした。ふつうに話はできていたと思います。そう言えば、その頃からカズンからがやたらと体に触ってくる機会が増えました。でも最初から警戒心をむき出しで見せていたし正直触られるのが嫌だったので、できるだけ躱していました。レストランを出るまでの記憶はあります。カバンも相変わらずがっちり抱えていました。

medications-257333_640*写真はイメージです。

―レストランでは比較的、通常の状態だったと言うことですよね。どんな会話をしていたんですか?

僕への質問とか普通の話です。で、しょっちゅうハイタッチをして盛り上がる。相変わらず男性は大声で楽しそうに、下ネタを混ぜた意味でポケモンGO! と大声で連呼していました。下ネタは相手を笑わせる手段のひとつにも成り得ますが、とにかく僕の気分を盛り上げようとしていたんだと思います。
僕自身のことを聞いてくる時はやたらと褒めてきました。たとえばすでに会話は英語で成り立っているのに、少し英語を話すだけで、「なんでそんなうまいの?! ほんと驚きだよ!!」、という感じです。以前ラグビーをやっていたと話した時は、「そうか、だからか!」と大げさに喜んで反応していました。今は現役を退いてしばらく経って、普通じゃラグビー選手の体つきとは思わないはずですが、褒めちぎって盛り上げることが鉄則なのかもしれないですね。変な反応だ、大げさだと思っても、褒められて気を悪くする人は少ないでしょうからそこで帰ったりしないだろうし。

―ではレストランの後はどうされたんですか?

レストランを出たきっかけは男性が呼んだ車が来たから行こう、と言われたからです。男性はその車でマラテ地区に遊びに行こうと誘ってきました。またポケモンGO! と叫んで、あくまで明るく、そしてしつこく誘ってきました。でも呼んだ車が高そうだったんですよ、まさかマフィアの拠点だとかに連れて行かれるのではと想像してぞっとしました。そこからなんとか安全に帰らなきゃとしか思わなくて、何かいい言い訳がないか必死に考えました。泊まっているホステルがあるのはマカティだし、マカティにしか行きたくない、次の日バギオに行くから早く帰らなきゃいけないと叫ぶようにして断りました。それでもあまりにしつこいので車に乗るまでしばらく揉めていたと思います。
ついに男性が諦めたのか、バギオ行きのバスチケットの予約が必要だろうからバスターミナルまで送ろう、と提案してきました。マラテへの誘いがあまりにしつこかったので、やっと断念したかと安心したことと、パサイのバスターミナルまでならレストランから近いし、とこちらも折れる気持ちでしぶしぶ車に乗り込みました。
でも車に乗ってみたら、改めて「やばい。」と思いました。車中の狭い空間で何をされるかわからないと改めて怖くなったんです。乗ってしまったのは本当に失敗でした。

insidecar(車中の座席)

―万一逃げられないような配置にしたんでしょうか?

そうだと思います。恐怖ですよね…。ちょっといい車だったし。うしろはみんな対面で座れるようになっていました。

―車中でも意識があったんですね?

はい。乗った直後は油断できない、せめて運転手は味方であることを祈って、「絶対マカティ行くよな! ドライバーさん、わかる?! マカティだ、マカティ!」と何度も必死に叫びました。叫んだその場で降りるとも喚いたんですが、運転手からはなんの反応もありませんでした。彼が一般人だったのか一味だったのか今もわかりません。
あとは携帯を握りしめて地図アプリで現在地を確認したりして、できる抵抗はとりあえずしました。ですが、記憶はここまでです。

―そこで記憶が途切れてるんですか?

そこで意識を失ったと思います。まったく覚えていないので…。次に目が覚めたらマカティの交番でした。

―警官が保護してくれたんでしょうか?

交番の前で寝ていたらしいです。意識が戻った時、警官の目の前で尋問を受けていました。と言っても眠すぎて尋問にもならない、ひどい有様でした。

―では、被害報告はうまくできなかったんですね。

実はその時点で被害に遭ったなんて思ってないんです。なぜこんなところで尋問されなきゃいけないのかという気持ちだけで、しかも今にも寝落ちしてしまいそうなくらいフラフラなので、帰りたいとしか思いませんでした。

―警官には何も言わなかったんですか?

自分は何も悪いことをしていないと思っていたので、振り切るように出てきてしまいました。うしろで警官が何か言っていたとは思いますが、外に出てたところでタクシーが通りかかったのをつかまえてホステルへ移動しました。途中、地図アプリで現在位置を確認しようとした時にスマホが見当たらなくて、レストランに忘れてきたんだと激しく後悔しましたが、それでもまだ盗られたなんて考えていませんでした。
ホステルに到着してタクシー代を支払おうとした時、やっと財布の中身がないことに気づいたんです。でもなぜか2USドルだけ残っていました。近距離だったのでこれなら足りると考えて、それを見せて「これで同じ価値のはずだから」と伝えたら運転手が納得して受け取ってくれました。

―他に残っていたものはありましたか?

パスポートがありました。本当に助かりましたが、盗っていかなかったんですね。日本大使館にでも行かれたら却って困るからかもしれないし。USドルはどこに行っても通用するからと考えていて、とりあえず用意していたものです。

―被害額はどれくらいですか?

USドルが400弱、あと4,000フィリピン・ペソです。

―他になくなったものはありますか?

スマートフォンと、腕時計です。

―クレジットカード類は大丈夫だったんですか?

ホステルに置いてあって、持ち歩いていなかったんです。いつも海外旅行の時はお金など貴重品を3か所に分けるようにしています。ただ、今回は散策中に両替をしようと考えていたので2つにしか分けていませんでした。なので、思ったより多く盗られてしまいました。

―確認した後は?

ホステルに着いた後、ひたすら寝ました。翌日は朝8時には起きて出発する予定でしたが、実際の起床は午後2時半でした。起きて思ったのはバギオに行くということだけで、すぐにパサイのバスターミナルへ向かいました。

―被害に遭ったことは記憶から抜け落ちていたんですか?

というよりホステルからバスターミナルまでどうやって行ったか記憶がほとんどないんです。ただあの時バギオへ移動しなきゃ、バスターミナルに行かなきゃと焦っていたことだけ覚えています。完全に思考が低下していますよね。

―では警察に行こうとしたかも覚えてないんですね。

もしかしたら前日に警察を振り切ってきた後ろめたさもあって躊躇したかもしれません。それでも睡眠薬を盛られたなんて、この時は想像もしていなくて、自分が油断して盗難に遭ったから自分が悪いとも考えていたし。
パサイのビクトリーライナー・バスターミナルに辿り着いたら、偶然その場でバギオへ出発する便が出るところだったんです。手を挙げて飛び乗りました。それから車中で一度も起きていません。ゲストハウスへ連絡する余裕もありませんでした。

―マニラからバギオへの上り便はレギュラーバス(高速を通らないバス)で6,7時間かかりますよね。その間ずっと寝ていたんですか?

一度だけ隣の人に肩を揺すられて目を覚ましたと思いますが一瞬です。変な寝方をしていて迷惑だったんでしょうね。それ以外は休憩がいつあったのかも気づいていません。その便に乗っていなかったら出発のパサイ・バスターミナルのベンチで寝入っていたかも。

―薬の量も種類もわかりませんが、強力な効き目ですね。

さっきインターネットで睡眠薬強盗のマンガを読んだら、勧められたカップに口をつけただけで、すぐに意識を失って盗難被害に遭った、と言うものがありました。それに比べたら量は少ないんでしょうが…、怖いです。

―バギオのバスターミナルに着いた時、まだ眠かったのでは?

どう表現していいのか難しいんですが、長い間寝たので十分という気持ちがあったし、すっきりした感も出発時に比べれば少しはありました。目も覚めていました。でも体がふらついて頭がくらくらする感覚に慣れなくて気持ち悪いんです。吐くような気持ち悪さではなくて、立っていてもフワフワして揺れているような。
ゲストハウスに向かう時、スマホがなくて地図アプリが使えないし、ぼーっとしているからまともに応対できていなくて、旅行本に載っている地図と住所を運転手に見せてお願いしました。ずいぶん迷ったんですが、最後は探し出してくれました。

以下、事件の概要です。

  • 場所
    • ▼マニラ市 エミルタ、マラテ地区
    • ▼睡眠薬を摂取した場所:エミルタから文化センター西側へ徒歩圏内の海が見える雰囲気のいいレストラン
  • 被害遭遇した頃の時間
    • ▼フィリピン到着2日目の3、4PM
  • 被害額、物品
    • ▼金額 … 380USドル、4,000ペソ
    • ▼物品 … 腕時計TIMEX(タイメックス)、iPhone 5S
  • 犯人の特徴
    • ▼人数 3人(他協力者は不明)
    • ▼夫婦役の男性と女性/見た目:50代後半/設定:夫婦、セブから来た観光客
    • ▼カズン(いとこ)役の女性/見た目:30代、自称24才、美人というわけではなかった/設定:幼稚園の先生、夫婦の親戚で彼らと一緒にセブから観光に来ている。
  • 犯人の役割
    • ▼夫役の男性が首謀犯ではないか。連絡係、進行係を担っていたよう。
    • ▼妻役の女性はN.N.さんの主な喋り相手役。話を続けて飽きさせないよう努めていた。少しボケる要素があって主犯格タイプではなさそう。
    • ▼カズンは色仕掛けの手口を使う場合に必要なのでは。
  • 行動の特徴
    • ▼場を盛り上げ続ける。どんな話でもハイタッチを求めてくる。明るい。
    • ▼カズンは最初会った時は、理由は不明だが、N.N.さんを警戒、もっと言えば軽蔑すらしているような雰囲気だった。まったく親しげな雰囲気を見せなかったが、のちにボディタッチをしてくるなど変化あり。

 

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―海外旅行での事前準備はしますか? 具体的には?

貴重品を3か所に分けて所持すること、一応インターネットや「地球の歩き方」で犯罪対策をしておきます。

―実際には?

今回、残りのお金(主に日本円)とクレジットカードはホステルに置いていました。USドルをペソに換金しようと思っていたので、その日は2か所にしか分けていませんでした。結果、盗られたのは所持金の半分以上になりました。
犯罪対策をしていたつもりでしたが、見逃していた部分がたくさんありました。海外もそれなりに慣れていたので油断してしまったかもしれません。睡眠薬強盗のことはバギオに着いてゲストハウスの人に言われてはじめて知りました。眠さの原因もそこで知りました。
以前マレーシアでバックパックを切られたことがあって、後ろ向きに背負っていたのでまったく気づきませんでした。ただ、その時には底の方に貴重品、上部に果物をたくさん入れていたおかげで何も盗られませんでした。

―今、具合はいかがですか?

今は大丈夫、というか“まし”になってきましたね。(インタビュー時、事件3日後の晩)でも記憶は飛んでいます。自分で何を言っているかはわかっていますが…。
これまでの症状は、フラフラする、眠り通した後は眠くならない、着替えをする時は平行に保てない、歩くとバタバタと大きな音を立てる、階段を降りる時は何かにつかまらないと転がり落ちてしまいそうになり、自分でも止められない。

―今、なにか思うことや伝えたいことはありますか?

もしかしたら被害に遭ってしまったポイントは、英語で返答できたことかもしれないと思いました。話している間はすごく楽しかったし…。僕の恰好も顔もフィリピン人ぽくなかったと思いますが、フィリピン人だと思った、と話しかけてきた時の違和感をもっと覚えておくべきでした。

―お疲れのところご協力ありがとございました。

 

事件後の様子

バギオに着いた直後、起こったことをひと通り話してくれたN.N.さんですが、しっかり喋ってはいるように見えて、歩くとしょっちゅう周りにぶつかり大きな物音を立てていました。また自分が何をしているか、喋っているかは把握できていると言っていましたが、3日後のこのインタビュー時に確認してみると、初日にご自分で話した内容は半分以上覚えていませんでした。傍から見ていて、少しずつですが日々回復されているのがわかったのでその点だけは安心でした。この後、N.N.さんは復調され、念願だった登山をし、警察に被害届を出しに行かれました。

 

帰国後、再度お聞きしました。

―これからフィリピンに来る人に伝えたいことがあれば教えてください。
「後日調べたらマニラは特に睡眠薬強盗が多いことで有名なので、マニラに来る旅人には少しでも多くこのような可能性があることを知ってほしい。マニラに行く知り合いがいれば、睡眠薬強盗に注意することを伝えてほしい。」

―その後、被害届などはどうなったんでしょうか?
「睡眠薬の症状は数日で回復したので病院には行かなかった。バギオの警察には行ったが、マニラで手続きするよう言われた。加入していた海外保険に紛失盗難が入っていなく、マニラに滞在する予定もなかったのでマニラで紛失届を発行することは諦めた。」

 

あとがき

後日談を読んで、警察には行っておくべきだった、と思われた方が多くいらっしゃるかもしれません。ただ旅行者は時間も限られていて、どうしても時間が最優先になり、N.N.さんのように諦めざるを得ないケースは非常に多いと思います。またそんな事情を狙ってくる犯罪でもあるのでしょう。

睡眠薬強盗のパターンは、家族を装ってバックパッカーを狙うというものが多いと聞きます。陽気なお父さんに誘われて家に行ったら、優しそうなおばあちゃんや可愛らしい子どもがいた、お母さんが「日本からようこそ。家族でご飯を食べるから一緒にどう?」なんて演出をされたら、つい心を許してしまい出されたものを素直に口にしてしまうに違いありません。

そして今回の場合、睡眠薬がグラス1杯半にどれだけ入っていたかわかりませんが、睡眠薬の過剰摂取と考えると恐怖に近いものがあります。

N.N.さん自身は決して相手に一定以上気を許したつもりはなく、楽しみつつもそれなりに警戒は解かないようにしていました。が、意識が失くては守るものも守れません。旅行では偶然の出会いも楽しみのひとつですが、このような犯罪との境目をどう判断するか、現代では非常に難しいことになってしまいました。私たちには危険な可能性があるところには一切近づかない、可能性は排除していく、それくらいしか手立てはないのかもしれません。

予想外のことはいくらでも起こり得ます。どれだけ気を付けても足りることはないかもしれませんが、せめて可能性を予め知っておくことでこの文章が微力でもフィリピン・睡眠薬強盗被害が減る助けになりますように。

N.N.さん、改めて大変な状況の中ご協力、公開の許可をいただきありがとうございました。

(文章:バギオライフ Iuko)

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